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関東最古クラスの町家・川越の「水村家住宅」が取り壊しの危機に 署名運動も

水村家住宅

水村家住宅

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 川越市で江戸時代中期に建てられた町家建築の「水村家住宅」(川越市喜多町1)が取り壊しの危機にある問題で、移築や部材保存を求める市民有志が同住宅の一般公開や署名運動を行っている。公開は既に3回目が終わり、次回の3月25日で最終公開となる。

水村家住宅 江戸時代前ともいわれる仏壇

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 同住宅は、札の辻交差点から北に200メートル北側の道路沿いにある木造建築。杉の皮を屋根に葺(ふ)く「杉皮ぶき屋根」や、道路側を低くするドーム形の「舟底天井」などが特徴。1893(明治26)年の川越大火を逃れたため、この火事がきっかけで増えた川越の蔵造り建築より以前の江戸町家の姿を今に伝え、現存する町屋建造物としては関東最古のものの一つといわれている。

 この家の住人だった水村家は江戸時代、みそ・こうじ問屋、明治以降は米穀問屋を営み、幕末には川越総名主も務めた家柄。現在は空き家になっているが、近年まで同住宅に住み生活していた子孫の水村圭子さんは「歴史のまちといわれる川越で、昨年取り壊された『旧鶴川座』のように、歴史的価値の高い古い建造物が人々に知られることなく消されてしまうのは大きな損失」と話す。「ここは現状借家となっているため、登録文化財にできない事情がある。しかし現所有者は建物部材の提供を承諾してくれているので、何とか保存する道を探している」と言い保存運動に励む。

 一般公開では商家の面影を残した間口の広い店部と、客間・居間・炊事場などに区切られた住居部、職人たちが寝泊まりし、こうじなどが保存されていたと思われる中2階部などを見ることができる。年数がはっきりしないほど古い部材も残っており、「安土桃山時代のものでは」ともいわれる仏壇もある。

 同住宅はまた、多くの文書が残され市立博物館に保存されている。長く建築史を研究している全国町並み保存連盟常任理事の荒牧澄多さんは「建物と文書が同時に残っているのも全国的に珍しい」と言う。公開中は建物の特徴や価値を来訪者に熱心に解説している。

 自治会を中心に署名運動も行っている。保存運動メンバーは「とにかく残された時間がない。保管、移築に向けた力と知恵を何とか貸してほしい」と協力を呼び掛ける。

 一般公開は3月25日の10時~12時。問い合わせはTEL 049-222-0079まで。

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