JTB川越支店(川越市脇田本町)は11月27日、JTB川越クレアモール店(新富町)店頭で毛呂山町産のブランド柚子「桂木ゆず」の即売会を開き、大勢の買い物客らがマスク越しにも漂う爽やかな香りに誘われて足を止めた。
埼玉県南西部に位置する毛呂山町は、日本最古の柚子とされる「桂木ゆず」の産地。甘くて香りが強いのが特徴で、香り成分のリモネンは一般的なユズの4倍、バニラの香り成分のバニリンは9倍ともいわれる。毛呂山町が誇るブランドユズにもかかわらず、生産者の人手不足や後継者不足は年々深刻化。今回、市内城北埼玉高校の生徒50人が毛呂山町にある3軒のユズ農家で収穫を手伝い、2日後の当日、東京国際大学の学生と協力して店頭販売を行った。その場で手指の消毒をした来店者が箱に詰まったたくさんのユズから自分で好きなものを選べるようにし、JTBで未使用のまま残っていたオリンピックのロゴ入りの袋を再利用した。
この活動は「地域を元気に、人を笑顔に。」をキャッチフレーズに全国で実施している「JTB地球いきいきプロジェクト」の一環。
城北埼玉高校フロンティアコースでは昨年7月、現代社会と英語、SDGsを絡めた「小江戸川越学」をスタート。東京国際大学とは、JTB川越支店が橋渡しとなって「衣食住教育」の「住」の部分で連携して活動している。今回、毛呂山町観光協会から人手不足に悩むユズ農家について話を聞いた同支店教育営業課グループリーダーの肥田洋行さんは、高校・大学等の活性化と地域の活性化を目的とした「産官学(さんかんがく)連携」ができないかと考え、今回のプロジェクトを企画。「今回訪問した農家には、予想していた以上に歓迎され喜ばれた。高校生にとっても、将来について考えるきっかけや気付きの場を提供できたように思う。香りの記憶はずっと残る。今後もユズの香りを嗅ぐ度に、この経験を思い出すのでは」と話す。
収穫を手伝った3軒の農家は、高齢男性がひとりで運営、高齢の母親と2人暮らしの女性が脱サラしてひとりで運営、そしてもう一軒は無人だった。「今年の夏に経営者が亡くなった後、後継者がいないまま放置され、たわわに実った実が収穫されることなく落ちるのを待つのみの状態だった。今回はこの3軒を訪問したが、人手不足に悩む農家はもっとたくさんあるはず」と引率した城北埼玉高校同コースカリキュラムマネジャーの内野正幸教諭は言う。
女性ひとりの農家で収穫を手伝った新井大翔(ひろと)さんは、毛呂山町の隣りの越生町に住む高校2年生。「ユズには鋭いとげがあり、ずっと上を向いての収穫は首や腰が辛かったが、仲間と一緒の作業は楽しさの方が勝った。農家の方が『いつもは10日かかる収穫が1日で済んだ』と喜んでくれたことが何よりもうれしかった」と振り返る。「人手不足と聞いてはいたが、実際にその状況を目の当たりにし、悲しい気持ちになった。農業という仕事にも興味が湧き、帰ってからさっそく友人にも体験したことを話した。来年は受験生だが、ぜひまた収穫を手伝いに行きたい。きっと勉強のいい気分転換にもなると思う」とも。
「川越を一つの仮想大学とし、川越を大学生の力で活性化する」ことをテーマにした「ハイポテンジャーユニバーシティ」活動を進める東京国際大学3年生の横関彩音さんは、店頭販売を担当。「今回のような取り組みには初めて参加したが、一般の方とのコミュニケーションがとても楽しかった」と話す。川越の歩き食べ問題、ごみ問題を解決する一助となるように、手作りのはんこを押した紙袋を用意し、「この後は他の学生たちと清掃活動しながら、観光客に配布する。街の景観を保つため、ゴミの持ち帰りなど環境を意識しながら川越観光を楽しんでほしい」と呼び掛ける。
肥田さんは「毛呂山町のユズの販売会は来年以降も続けていきたい。今後も産官学が連携し、地元の活性化につながるような企画を考え、実施したい」と意欲を見せる。