ふじみ野市中央公民館で7月21日、「地域リハケアネットワーク」の第10回講演会が行われ、約600人が来場した。同ネットワークは、富家病院を中心にふじみ野エリアの医療関係者が連携し、「誰もが住み慣れた場所で自分らしく暮らし続けられる地域づくり」を目標に活動を続けている。今回、その活動に着目した。
「地域リハケアネットワーク」は、高齢化社会において地域の結びつきが重視されることを背景に、「顔が見える連携作り」を目指して10年前に立ち上げられた。特に埼玉県は日本で最も高齢化率が進む県として、対策が求められていた。
同ネットワーク発起人で富家病院理事長の富家隆樹さんは、国内で400万人以上いるとされている「認知症」への対応をポイントとして挙げる。富家さんは「認知症は薬を出して治るものではない。一方で、周りの人の対応で認知症状が良くなることがある。認知症への理解とともに認知症の方に寄り添う姿勢が大切」と話す。認知症への理解を進めるために「認知症サポーター養成講座」を自治体と共同して進め、ふじみ野市では7449人(2017年6月)が受講しているという。
認知症の人に対して、富家病院や特別養護老人ホーム「大井苑」では「ナラティブ・ホスピタル」を推進している。ナラティブは「物語」という意味で、ナラティブ・ホスピタルは物語を大切にする医療のこと。誰が何を書き込んでもいい「ナラティブノート」を一人一人の枕元に準備したり、「ナラティブアルバム(写真)」や「ナラティブムービー(映像)」で認知症の方が歩んできた人生を表現したりする。
富家さんは「認知症になると(記憶障害から)一人一人の人生が見えにくくなることがある。しかし誰にも歩んできた人生があり、物語がある。それを皆が知り合い、尊重することで温かい気持ちが芽生える。認知症の方への向き合い方も変わってくる。次の10年は、一人一人を大切にした医療、ナラティブ・ホスピタルを一層推進したい」と話す。
認知症に関しては、ふじみ野市や同ネットワークの介護・医療事業所が主催する「オレンジカフェ」が毎月開かれている。認知症の人やその家族、地域の人々に対して、相談や情報交換の場となっている。問い合わせは、ふじみ野市高齢福祉課介護支援係か主催の各事業所まで。