川越スカラ座(川越市元町1)で12月23日、映画「犬に名前をつける日」のコラボレーションイベントとして動物愛護トークショーが行われた。登壇者は同作品監督の山田あかねさん、NPO法人犬猫みなしご救援隊理事長の中谷百里さん。
同劇場では12月19日~25日の同作品上映期間中、毎日有識者による動物愛護トークショーや講演会を行った。同作品の監督を務めた山田さんは現在脚本家、小説家、エッセイスト、映像作家として活躍し、代表作は「すべては海になる(監督・脚本)」「やっぱり猫が好き(脚本・演出)」など。
愛犬を病気で亡くしたことをきっかけに同作の制作に取り組んだ。動物愛護センターから犬猫を助ける活動をしている団体や、東日本大震災で飼い主を失った犬猫の保護活動をしている団体などを4年間かけて取材し、完成にこぎ着けた。
同じく登壇者の中谷さんはNPO法人犬猫みなしご救援隊の理事長を務める。同団体は虐待、遺棄、傷病等による理由で一般家庭では引き取り手のない犬猫を終生飼養ホームで保護を行い、殺処分対象となってしまった犬猫を保護し新たな里親と結び付ける譲渡活動を主として活動。広島県と栃木県を主な拠点としている。
当日は満席で、立ち見をする人も見受けられた。中谷さんは東日本大震災後、東北で行き場を失った犬猫の保護活動を行ったことを中心に講演。「仙台に行った時は地元のボランティアの方々が犬猫の保護活動を積極的に行っていたのである意味で安心もしたが、福島県に寄ったときは外に飼い主と離れてしまった犬猫がたくさんいた。地元の人に『全員避難してしまったので、犬や猫が置き去りになってしまっている』という話を聞いたとき、何とかしなければいけないと感じた」と当時を振り返る。
連日原子力発電所から20キロ圏内に取り残された犬猫の保護活動を行ったことなどを語り、「毎日風呂にも入れず大変だったが、福島での保護活動をしたことによって本当の保護活動の意味を知ったのかもしれない」と話した。
山田さんは「中谷さんのように全力で犬猫の保護活動を行える人というのは貴重な人材で素晴らしいが、全員が全人生を懸けて保護活動を行わなければいけないというわけではない。できる範囲で援助やボランティアを行うことも立派な保護活動。動物保護の活動に正解はない」と呼び掛けた。
質疑応答で観客からの「埼玉県で犬猫の殺処分数をゼロにするにはどういう活動を行っていけばいいか」という質問に対し、「できることから少しずつ保護活動を始めていくことが大事。例えばペットショップではなく、保護犬や保護猫を家族として迎え入れるという選択肢があるということを身近な人に積極的に伝えていくなど、自分から情報を発信していく勇気を持つことが大切」と山田さんは答えた。
「例えば行政が殺処分ゼロの目標を掲げ、動物愛護センターが犬猫の殺処分を行わないことを決定したとしても数字上は殺処分がなくなったことになるが、現状のままではどこかで殺されてしまう犬猫は存在する。『殺処分ゼロ』という言葉だけにこだわりすぎないことが大切」とも。中谷さんは「草の根を分ける活動になってしまうかもしれないが、『誰かから直接聞いた』という話が一番影響力がある。積極的に知人や友人に動物保護活動の話を伝えてもらいたい」と語る。講演終了後にはサイン会が開かれ、2人は会場のファンと積極的に交流した。
トークショーの司会を務めた市内の「保護猫カフェねこかつ」(新富町1)代表の梅田達也さんは、「さまざまな形で保護活動を行っている人たちに影響を受け、この会場にいる方々がそれぞれの形で犬猫の保護活動に関わってくれるようになればうれしい」と締めくくった。